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■ 第20回 健康診断を活かす
 メタボリックシンドローム 小澁 陽司 ■
 男性・女性の別を問わず、健診受診者の皆様にとって今もっとも気になる採血の項目のひとつが、「コレステロール」でしょう。イメージ的にコレステロールは、「悪の権化」のように思われがちなのですが、必ずしもそうではありません。コレステロールが体内で不足すると、様々な弊害が出現してしまいます。要するにコレステロールは、体内で「過剰」になるのがいけないのであり、人体にとっては必要不可欠なものなのです。前回のメタボリックシンドロームの時にお報せしたように、今回から何回かにわたり、このコレステロールを始めとした血液中の「血清脂質」について、ご説明いたしましょう。

 血清脂質には、コレステロール、中性脂肪、リン脂質、脂肪酸などの種類があり、この血清脂質が高値である状態を、「高脂血症」と総称します。高脂血症の状態が長く続くと、血流に乗って全身へ行きわたる過剰な脂質が、いろいろな組織に沈着してしまいます。これらの脂質の中で、血管内に沈着して動脈硬化の発症に深く関係するのが、コレステロールと中性脂肪の二つです。皆様ご存知だと思いますが、コレステロールは、「善玉」と「悪玉」というように分けて考えられており、このうち動脈硬化を促進させるのが悪玉コレステロールということになります。これらの詳細については、次回のこのコラムでお話ししましょう。

 悪玉のコレステロールや中性脂肪が血液中で増加すると、徐々に血管壁内に沈着して動脈の詰まりや硬化を引き起こし、その状態が長期間続くことによって、やがては心筋梗塞や狭心症といった心血管病変や、脳出血や脳梗塞などの脳血管病変が発症することになります。

 働き盛りの方々の突然死を防ぎ、健康体で老後を迎えるためには、食事の工夫や薬物療法を活用し、高脂血症にならないための努力が必要です。しかし、コレステロールは私たちにとって悪役でしかないというわけではなく、人間の各部位を構成する細胞を包んでいる細胞膜や、血中に分泌される各種のホルモンなどの原材料であるため、人間が生きていく上で、どうしても必要な成分でもあるのです。低値にもなりすぎないよう、上手くバランスを保つことが重要であると言えます。



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